Episode 01:混沌と夢の家族に生まれて

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家族と夢の狭間で生きた少年の物語。/ A story of growing up between chaos and dreams.

私は4人家族の長男として生まれました。父、母、妹、そして私です。

表面上はごく普通の日本の家庭に見えました。
しかし実際は、誇りと緊張、そして静かな混沌が入り混じった小さな世界でした。


父について

父は個人タクシーのドライバーでした。
バブル景気の頃は仕事も順調で、ついには家のローンもすべて完済しました。

裕福な家に育ったためか、どこか強い誇りを持っていました。
子どもには優しかった一方で、母に対してはいつも疲れたような表情を見せ、
たとえ理不尽でも、彼女の意見を静かに受け入れているようでした。

父は昔からお酒が好きでした。
バブルが弾ける前から、晩酌は毎日の習慣。
しかし、経済の崩壊とともに、その一杯が「日課」から「依存」に変わっていきました。
次第に飲む量が増え、時には運転前に口をつけることもありました。
今思えば、大きな事故を起こさなかったのは奇跡です。

それでも、父の中には最後まで失われなかった優しさがありました。
初孫である私の息子が生まれたとき、父は急に酒量を減らしました。
きっと「酔った姿では孫に会いたくない」と思ったのでしょう。
息子を見つめるときの父の小さな目は、笑顔の光の中に溶けていました。

父は孫をとても可愛がっていました。
しかし一度も抱き上げることはありませんでした。
古傷のせいで足が弱り、子どもを持ち上げるのが辛かったのかもしれません。
あるいは、自分の力をもう信じられなかったのかもしれません。
今となってはもう確かめようがありません。


母について

母も働いていましたが、彼女なりの苦労を抱えていました。
今で言えば軽いギャンブル依存だったのかもしれません。
機嫌が悪いときは誰も口をきけず、私も妹も、もちろん父でさえ黙っていました。

母は裕福な家庭で育ったわけではなく、
父の収入が多かったバブル期には貯金よりも消費に走りがちでした。
本来なら経済的な基盤を築けたはずなのに、気づけばお金はほとんど残っていませんでした。

母は口が悪く、気も強い人でした。
それでも彼女は彼女なりに、毎日を必死に生きようとしていたのだと思います。
年を重ねて気づいたのは、母が戦っていたのは「孤独」だったということです。


妹について

妹は母の気の強さをそのまま受け継いでいました。
感情的で、よく口論し、エネルギーに満ちていました。
母とよく衝突していましたが、本質的にはとても似ていたと思います。
どちらも強く、頑固で、そして生き抜く力を持っていました。

やがて妹は、とても穏やかで思いやりのある男性と結婚しました。
正直なところ、妹を受け止められるのは、彼のような人だけだと思います。


振り返って

私の幼少期は、決して穏やかなものではありませんでした。
それでも、あの騒がしい家の中にも温かい瞬間がありました。
父のタクシーが車庫に戻ってくる音や、漂うガソリンの匂い——
なぜかそれらが、安心感を与えてくれたのです。

気づけば、車は私にとって「心の拠り所」になっていました。
車は嘘をつかず、怒鳴らず、責めることもない。
扱い方に正直に応えてくれる。
そのシンプルな真実が、のちに私の人生を救うことになります。

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